雷電3号物語
マクシミリアン・シュナイダーの謀反から半月後
二人のグローランサーとその仲間達の活躍により、人々は平和で安定した生活を送っていた
そんな平和な日々の中、陽の落ちかけた土手に一人座り込んでいる少女がいた
名をルーシカ
人とは違う、猫の耳、尻尾、手足を持つ少女
彼女は猫族の少女だった
「ふにゃあ〜」
もう何度目になるだろうか、深い溜め息が漏れる
彼女の頭の中には一人の人間の青年が独占していた
その青年とは今回のマクシミリアン・シュナイダーの一件を解決した一人であり
インペリアルナイトにしてグローランサーでもある男
ウェイン・クルーズである
事の始まりはルーシカが人間に捕まり人間に復讐を誓いウェインを襲ったことからだった
それから何度か襲ったが敗れ悪の道に進みかけ友達と思っていた者に裏切られ殺されかけ
死を覚悟した時に彼は助けてくれた
それだけでは無く殺そうと襲った自分を友達と言ってくれて、探していた両親を見つけて知らせてくれた
ルーシカは恩返しがしたかった、しかしそれとは違う気持ちが芽生えていたのも事実であった
しかしそれが何であるかは解らずにいた
「ふにゃ、ウェインちゃん・・・何処にいるでしか・・・」
そう呟くとルーシカは小石を川に投げた
「ルーシカ、こんな所にいたの?」
背後から母親ルーガの声がした
「・・・もう、ご飯でしか?」
「そうよ、またウェインさんの事考えてたの?」
そう言うとルーガはルーシカの横に腰掛けた
「ママ、なんでしか?この気持ち・・・。逢いたいでし・・・恩返しがしたいのも確かでし
でも、それだけじゃない気がするんでし」
その問いかけにルーガは微笑んだ
「ウフフ」
「むーなんで笑うでしか!幾らママでも酷いでし、娘がこんなに悩んでるのに・・・」
ルーシカは頬をふくらました
「そうね、ごめんなさい。ルーシカも年頃の女の子なのね」
「?・・・どーゆー意味でしか?」
「ウェインさんに逢ったら解るわ、さっ帰りましょ、お父さんが待ってるわ」
そう言うとルーガは家に向かって歩き出した
「むー・・・はいでし」
ルーシカもルーガの後に続き歩き出した
空を見上げると既に無数の星がきらめいていた
(ウェインちゃん・・・)
次の日の朝ルーシカはいつもの様に髪をとかし、完璧に洗面を終わらせると軽く食事を済ませ
大きな荷物を抱えて少し強張った面つきで言った
「ママ、わちし少しの間旅に出るでし」
ルーガは驚かなかった、いつかこうなるだろうと思っていたからだ
「行ってらっしゃい」
微笑んで言った
ルーシカは少し驚いた
「お・・・驚かないでしか?」
ルーガは後片付けをしながら答えた
「ええ、行ってらっしゃい、あなたが決心したなら止めないわ、でも約束しなさい、必ず帰ってくると」
そう言うとルーガは小指を差し出した
ルーシカはその小指に自分の小指を絡めた
「はいでし!必ず帰ってくるでし!」
そう言ってルーシカは街に出た
ウェインに最後に逢った日に誓った事が功を成し街中でも猫族を偏見の目で見る者は殆どいなかった
「バーンシュタインにもいないとなると、何処に居るんでしかねぇ?」
旅立ちから幾日か過ぎた頃だった
ルーシカはバーンシュタインからロッテンバウムを通り折り返す形でスタークベルグに辿り着き宿屋に
泊まろうと向かった時微かに叫ぶ声が聞こえた
「・・・で・・・さ・・ご・・・!」
ルーシカは気にも留めず宿屋のドアを開こうとした時誰かが声の主が駆けてくるのに気づいた
「雷電3号!」
「雷電3号じゃないでしっ!!ルーシカでしっ!おまいは・・・ウェインちゃんと一緒にいた・・・」
目の前には大きな弓を抱えた弓と矢筒を背負った赤い服の少女が肩で息をしていた
「シャルローネよ、久しぶりねっ!元気だった?」
シャルローネ・クラウディオス
彼女はウェインの良き部下であり行動を共にしマクシミリアン・シュナイダーの一件で功績を挙げた一人
でもある
「元気でしよ♪シャルローネちゃんはどうでし?」
「んーなんか<シャルローネちゃん>って聞き慣れないわ・・・<シャロ>って呼んで。
私も元気よっ♪それで、どうしたの?その荷物」
「今、旅の最中なんでしよ」
「そうなんだ、ねぇ、今日はここに泊まるの?」
「そうでしよ、もうそろそろ陽も落ちそうでしから」
「それなら私の家に泊まっていきなさいよっ!私、一昨日から明後日まで休みなの」
「シャロちゃんの家はこの街にあるでしか?」
「そうよ、さっ、行きましょ♪」
そう言うとシャルローネはルーシカの手を引っ張って自分の家に向かった
(まだ、答えてないんでしけど・・・)
ルーシカはぽかんと口を開けたまま天上を見上げていた
シャルローネの家は豪邸と言う豪邸で天上には大きなシャンデリアが吊るされていた
幾つものプリズムがキラキラと光り輝いていた
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
シャルローネがそう言うと一人の執事が出迎えた
「この子はルーシカ。今晩は私の部屋に泊めます。二人分の食事の用意と
ベッドを一台私の部屋にお願いします」
「かしこまりました」
ふとルーシカは気づいた
「あ!あの・・・」
シャルローネと執事はその声に少し驚きルーシカに向き直った
「ど・・・どうしたの?」
ルーシカは少し照れながらそして申し訳なさそうに言った
「シャロちゃん・・・わがまま言ってもいいでしか・・・?」
シャルローネは小首を傾げた
「え・・ええ、なに?」
「あの・・・わちしは、人間と同じ物は食べられないでし・・・だから、おさかなさんを・・・」
「クスッ、ごめんね気づかなくて、一人分の食事とお魚に変えてください」
「かしこまりました」
そう言うと執事はニッコリ微笑んで屋敷の奥へと消えていった
呼ばれるがままに歩いていくとシャルローネは一つの扉を開けた
「私の部屋よ、どうぞ」
「お・・・お邪魔しますでし・・・」
ルーシカは入って荷物を降ろし椅子に腰掛けた
シャルローネはベッドに腰掛けた
程なくしてドアがノックされた
「どうぞ」
シャルローネが答えるとメイドが一人、カップやティーメイカーを乗せた押し車を押して来た
「ありがとう、下がって結構です」
メイドは軽く一礼すると部屋を出て行った
シャルローネは手際よく紅茶を作り二人分のカップに注いだ
「ん〜いい香り♪冷めないうちにどうぞ」
そう言ってシャルローネは紅茶を一口口に入れた
ルーシカはカップを手に取り大げさなくらい息を吹きかけ恐る恐るすすった
シャルローネはそんなルーシカを見ながらまたクスクスと笑った
「猫舌だよね、やっぱり・・・」
「うんでし・・・」
しばらくして再びドアがノックされた
「どうぞ」
シャルローネが答えると執事が入ってきた
「お食事と浴場の用意が整いました」
「そう、ありがとう、下がっても結構です」
執事は軽く一礼すると部屋を出て行った
「だって、お食事先にしようか?お腹すいてるでしょ?」
「うんでし♪」
「じゃあ、いこ♪」
食堂に着くと一人分のディナーと一人分の生魚料理が用意してあった
ルーシカは色んな魚に目を輝かせながらもくもくと食べていた
食事を終えしばらくして浴場に向かった
浴場も恐ろしいくらいに広かった
「ひ・・・広いでしね・・・」
「そうかしら、他の人の家のお風呂に入ったこと無いから解らないわ」
「わちしの家くらいあるでし・・・」
「う〜ん・・・」
シャルローネはルーシカの言葉にろくな答えもせずルーシカの胸を見ていた
ルーシカは視線に気づき胸を隠した
「な・・・なんでしか・・・シャロちゃんはそーゆー趣味があるでしか・・・?」
「無いわよっ!ただ・・・大きいなぁと思って・・・」
「そうなんでしか・・・ねぇ、シャロちゃん」
ルーシカはシャルローネの背中を流しながら言った
「なぁに?」
「ウェ・・・ウェインちゃんは胸が大きい方が好きなんでしかねぇ・・・?」
「な・・・いきなり何よ・・・!?」
「ちょっと・・・気になっただけでしよ・・・」
「イタタッ!力入ってるわよ・・・ふ〜ん」
シャルローネは意味ありげな目つきでルーシカを見つめた
「な・・・なんでしか?」
「クスッ、なんとなくわかっちゃった、ルーシカの旅の理由」
「な・・・ななな、な!?」
「フフフ、出ましょうか」
二人は用意してあったパジャマに着替えて寝室に向かった
ルーシカもシャルローネもすぐにベッドに入った
少しの沈黙が流れる
その沈黙がルーシカにはたまらなかった
シャルローネの言葉が気になってたからだ
「シャ・・・シャロちゃん?」
シャルローネはルーシカの言葉をさえぎる形で話し出した
「ねぇ、ルーシカ・・・ウェイン隊長探してるの?」
ルーシカは顔が熱くなるのを感じた
「はう・・・・そ・・・そうでし」
「やっぱりね」
「な・・・なんでわかったでしか?」
「クスッ、態度とかでもわかるよ。でもね・・・」
「でも、なんでしか?」
「ウェイン隊長の事を聞いたときのルーシカ・・・可愛かったなっ」
そう言ってシャルローネはルーシカに向き直った
ルーシカは更に顔が火照った
「な・・・なに言うんでしか・・・」
「可愛かったよ、ほんとに」
「う・・・ね、ねぇシャロちゃん!一つ聞いていいでしか?」
「なぁに?」
ルーシカはシャロから目を離し天上を見つめた
「最近、いつも・・・ウェインちゃんの事が頭から離れないんでし、逢って恩返しがしたいんでし・・・
でも・・・それだけじゃない気がするんでし・・・胸がぎゅって痛くなったり、何も手につかなかったり
するでし・・・恩返しってこーゆーもんなんでしか?」
「フフフッ、それは違うよルーシカ。恩返しはそういうものじゃないわ」
「じゃ、じゃあこの気持ちはなんなんでしか?」
シャルローネも天上に目を移した
「そっか、今まで一人でいたんだものね。解らないわよね」
「ママも教えてくれなかったでし、病気なんでしか?」
「病気と言ってもおかしくないかもしれないわね」
「えっ!?・・・・そうなんでしか」
「でも、大丈夫よ。健康な病気だから」
「うにゃ?健康な病気って言うのはどーゆー事でしか?」
「ルーシカ、それはね[ 恋 ]って言うのよ」
「こい?おさかなさんでしか?」
「クスッ、違うわよ。答えは・・・ウェイン隊長が知ってるわ」
「ふむ、これはいよいよウェインちゃんに逢わなくてはならないでし」
「そうねっ、じゃあもう寝ましょう、明日も早く出るんでしょ?」
「そうでしね、早く見つけたいでし、それじゃオヤスミでし」
「おやすみなさい」
シャルローネはしばらくルーシカの寝顔を見つめていた
何に対しても一生懸命でそれでいて何に対しても不器用なルーシカが可愛かったからだ
「ふにゅ・・・ウェインちゃん・・・・何処にいるでしか・・・」
寝言が聞こえた
シャルローネは小さく笑った
「見つかるといいわね」
そういうとシャルローネも目を閉じた
翌日
「ル・・シ・・!ルーシカ!起きなさい」
「ふにゅ・・・もうちょっと・・・」
「もう!・・・あ、ウェイン隊長」
「え!?何処?何処でし?」
「クスッ、おはよ、起きた?」
「あう・・・・起きたでし・・・おはようでし」
「朝食の用意は出来てるわ。ちゃんと魚よ。さ、行きましょう」
朝食を済ませ、荷支度を終えたルーシカとシャルローネは玄関を出た
「シャロちゃん、お世話になったでし」
「いいのよ、楽しかったし」
「それじゃ行くでし」
「ちょっと待って!いい事教えてあげるわ♪」
シャロは意味深な笑みを浮かべた
「?何でしかいい事って」
「[ 恋 ]の答えを教えてもらったら今から言うとおりに行動しなさい♪
失敗は許されないわ、一度だけのチャンスよ。成功したらウェイン隊長は
きっと素敵なプレゼントをくれるわ♪」
「ふむふむ」
「教えてもらったら瞳を閉じて唇を気持ち上向けるのよ♪」
「ふむふむ、こうでしか?」
「うん♪」
「なるほど、わかったでし♪」
「ウェイン隊長は今グランシルの方に出かけているはずよ」
「なるほど、じゃあそっちの方に行ってみるでし」
「うん、頑張ってね!」
そう言うとシャルローネはニッコリ微笑んだ
ルーシカはコムスプリングスからグランシルへと向かった
途中何度か山賊に襲われたがルーシカの足は普通の人間には追いつけないのである
グランシルは大きな街で捜索するのには骨を折ったが見れるところは全て見た
しかし、肝心のウェインは見当たらなかった
「居ないでしねぇ、ふにゃ〜もう少し探してみるでしか・・・」
グランシルを出てブローニュ村や魔法学院を探したがやはりウェインの姿は見つからなかった
旅立ちから既に一月近く経っていた、コツコツ貯めていたエルムも宿屋に泊まる程も残っていなかった
グランシルの北にある草原に辿り着き食事をしながらふと思った
「はむはむ。あ・・・そう言えばウェインちゃんと初めて逢ったのはここだったでしねぇ、懐かしいでし
はむはむ、お金も無くなってきたでしがまだ終わらせる訳にはいかないでし、でも何処を探せば
いいんでしかねぇ・・・。はむはむ、もう少し南に行ってみるでしかねぇ。はむはむ・・・・んにゃ」
ルーシカの耳がピクピクと震えた
微かな物音が聞こえた
ルーシカが食事の手を止め後ろを振り向くとそこには無数のゲルが囲む様にして配置していた
「囲まれてしまったでしか・・・やるしかなさそうでしね」
ルーシカが倒せない相手でも無いが数が多すぎた
ルーシカが立ち上がるとゲル達は一斉にルーシカに向かって進みだした
ゲルの攻撃をかわしつつ反撃を食らわせ既に十匹近くを倒したが何処から来るのかゲルの数は減るどころか
徐々に増えてる気さえする
「にゃぁ〜キリがないでしねぇ、でも負ける訳にはいかないんでしよっ!」
ゲルの中に突っ込む、両手を使い一息に二匹づつ倒していく。
何度かゲルの攻撃を食らうがひるまずに爪を振り続けた
数十分の格闘が続いた
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
沈黙の中、ルーシカは仰向けに倒れた
周りには無数のゲルの死骸が転がっていた
「にゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜!もう疲れたでし〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
空には幾つもの星が輝いていた
「ウェインちゃんはすごいんでしねぇ、こんな奴らと戦いながら世界を救ったんでしからねぇ」
そんな事を思っているとついと涙が頬を伝った
「なんでっ・・・うっ・・・泣くんでし?うくっ・・・うっ・・・ウェインちゃん・・・ヒック・・・
何処に・・・何処にいるんでしかぁっ・・・逢いたいでしよぉっ!」
涙が止まらなかった
何故かは自分にもわからなかった
しかしそれも長くは続かなかった
ざっざっざっ
複数の足音が近づいてきたからだ
「だ・・・誰でしっ!?」
ルーシカは涙を拭うと立ち上がった
「こんな所にいたのか」
「おまいたちはっ!?」
「手間かけさせやがって」
足音の主はいつかのの山賊団だった
あの時は撒いたがそれでも彼らは諦めずに自分を探していたのだった
「くっ、しつこい奴らでしね」
「へっ、まぁな。お前みたいな珍しいモノを高く買ってくれる奴がいるもんでな」
頭領とと思われる山賊は薄ら笑いを浮かべた
「人をモノ扱いでしかっ!!最低でしねっ!!」
「猫のくせに口だけはいっちょまえだなぁ、おい!捕まえろ!」
「くっ・・・」
ルーシカは必死に足を前に出した
しかしさきの格闘で力を使い切ったせいか思うように足は動いてくれなかった
(お願いでしっ!逃げ切るまで・・・もって!!)
しかし思いは届かなかった
ルーシカの足は山賊の一人が投げたナイフを避けきる事は出来なかった
「あっ・・・」
それでも必死に逃げようとしたが髪の毛を掴まれ引きづられたしまった
「痛っ、はっ離すでしっ!!」
しかしがっちり捕まれた手を振り解くことは出来ず後から来た山賊に両腕も抱えられてしまった
頭領が歩み寄ってきた
「ったく何処まで手間かけさす気だっ!!」
パーンと頬が弾かれた
「あうっ・・・おまいらなんかに!・・・ぐっ」
腹部を蹴り挙げられ喋る事が出来なかった
「けほっ・・・けほっ・・・はっ・・・はっ・・・はっ」
痛みと苦しさで涙が溢れた
「うるせぇぞ。・・・おい!」
一人の山賊が小瓶を持ってきた
山賊たちは口と鼻を覆うように布を巻いた
頭領が小瓶を開けると嗅ぎ覚えのある臭いが鼻をついた
「うっ・・・これはっ・・・嫌っ・・・嫌でしっ・・・いやあああああああっ!!」
意識が薄れていくのが自分にもわかった
「ウェ・・・イ・・ン・・・ちゃ・・・」
ルーシカは力なくうな垂れた
「やっと捕まえられたか、お前ら!戻るぞ!」
ジャラッ
「う・・・痛っ!」
ルーシカは気がつくと同時に自分の腕が後ろ手に鎖でつながれている事に気づいた
「何処でしか・・・ここは」
辺りには何も無かった
あるのは壁と鉄格子だけだった
牢屋・・・そうとしか言いようが無かった
向かいにも同じ部屋があり通路には消えかかった松明が一本ささっていた
「どうするでし・・・逃げようにもコレじゃ何も出来ないでし・・・」
はずそうとする度にジャラジャラと音が鳴る
「くっ・・・」
コツコツコツ
足音が響いた
「お目覚めか?」
頭領がにやつきながら格子の先で見ていた
「ここから出すでしっ!!」
「出せるわけがないだろう?もうお前の買手がついてんだ、50万エルムだとよ」
「わちしは売り物じゃないでしっ!!」
「お前はモノなんだよっ!そして今から売られるんだよ、3時間後には何処に居るんだろうなぁ?」
そう言うと頭領はニヤニヤ笑いながら去っていった
悔しさで涙が溢れた
今まで自分がしてきた事は何だったのだろう?
ウェインと約束して固く誓って人を説得して自分達の事を理解してもらおうと各地を渡り歩いてきた
しかし理解してくれない人もいた
結果自分はその理解してくれない人種に捕まり物として扱われ売り買いされる
「わちしの・・・わちしのしてきた事はっ・・・うっく・・・・無駄・・ヒック・・だったんでしか?
・・・ウェインちゃん・・・ウェインちゃん!・・・うっ・・・教えてよっ・・・ウェイン・・・
ちゃん・・・」
もうどれ位経っただろうか、松明の燃える音以外聞こえないここでは狂いそうなくらい静かで時間の
流れすらもわからない
「もう・・・諦めるしかないんでしかね・・・ママ・・・約束守れないかもしれないでし・・・うっ
・・・ウェインちゃんに逢うまではって思ったでしが・・・そうもいかないみたいでしね・・・」
コツコツと足音が聞こえた
「さて、時間だ」
鉄格子が開けられ頭領が入ってきた
手には見覚えのある小瓶を持っている
「暴れられると困るんでね、寝てもらおうか」
その臭いで再びルーシカは気を失った
「ママ・・・ごめ・・・ん・・・でし・・・」
意識が朦朧としていた
薬がまだ効いているためか目がうまく開かない
物音がする
ただの物音ではない
金属と金属の重なり合う音、叫び声、怒号、足音色んな音が一斉に聞こえている
それは徐々に近づいてきている
「な・・・なんでしか・・・ここは・・・まだ・・・あの場所・・・なんでしか」
格子の様な物が見えるが確認は出来ない
ただ違うのはやけに騒がしいこと
「ちくしょーっ!後少しだったのにっ!!」
頭領の声が聞こえる
叫び声が複数あがった
「なめんじゃねえっ!手前らで俺が倒せると思ってかっ!けっバーンシュタインの兵も大した事ねえなぁ!」
再び叫び声が上がる
どうやら山賊団とバーンシュタイン兵が戦っているようだ
「くっ、手強い!一旦退くぞ!!」
「野郎共っ!浮き足立った相手を逃すなっ!!」
叫び声と足音が遠ざかって行く
そして辺りは静まり返った
さきの戦闘は山賊団の勝利に終わったらしい
辺りにはバーンシュタイン兵や山賊の死体が横たわりむせ返る様な血の臭いが充満していた
そんな中ルーシカははっきりと意識を取り戻しつつあった
「ここは・・・やっぱり・・・元の場所なんでしね・・・」
少しの安心感がルーシカの中を埋めた
しかしそれはすぐに緊張感へと変わった
再び山賊達があわただしく動き始めたからだった
「侵入者がいるぞ!相手は一人だ!見つけ次第殺せっ!」
頭領の怒号が聞こえる
(侵入者でしか・・・これは、助かるかも知れないでしね・・・でも、一人でなんて少し無謀な気が
しないでもないでしね・・・)
数十分後、再び頭領の怒号が聞こえた
「たかが一人に何人がかりで時間かけてやがるっ!!」
(まだ生きてるみたいでしね、侵入者ちゃん、強いんでしねぇ、頑張ってでし!!)
ルーシカは強く思った
希望はまだ残っていた
神様はまだルーシカを見捨てていなかったのだ
「ぐあああっ!!」
少し離れたところから叫び声が聞こえた
頭領とその近くにいた山賊が立ち上がる
さっきとは違い金属の重なる音は無く叫び声と何か鋭利で重いものを振るフオォンと言う音だけが聞こえる
ルーシカの位置からでは良く見えなかったが青年が戦っているようだった
(こ・・・ここまで来たんでしか!?すごいでしっ!!)
ルーシカの希望と期待はますます強くなった
その上で聞き覚えのある音に疑問を抱いていた
(はて・・・どっかで聞いた音でしね・・・このフオォンって音は・・・)
キュッ
胸が苦しくなった
(ふにゃ・・・何ででしかっ?・・・こんな時にっ・・・)
山賊の叫び声が近づいてきた
コツコツと侵入者と呼ばれる青年の足音も近づいて来た
ルーシカはその青年を見ようと格子に近づいたがまだ見える位置ではなかった
「囲めっ!!」
頭領の声に山賊達は青年を取り囲む形で配置した
「死にたいのか?」
青年の声が始めて聞こえた
(この・・・声は・・・)
再びフオォンと言う音と共に叫び声と倒れる音が聞こえた
「くっ・・・てめぇ、何モンだっ!!」
「貴様に名乗る名は無い!インペリアルナイトとだけ言っておこう」
「イ・・・インペリアルナイト・・・一人で百人相手に出来るって言うやつか・・・
まさかとは思っていたが・・・ここまで強いとはな・・・」
「抵抗するのなら命の保証は出来ないぞ?」
(間違いないでしっ!)
徐々に頭領が下がっていく
と、同時にインペリアルナイトの青年も近づいてくる
「抵抗をやめるつもりはないんだな?」
「けっ折角大金が入るってのにこんなところで放り出せるか」
「愚かな・・・インペリアルナイトの強さ、その身で思い知るがいい」
ルーシカは確認する形でその青年の方を見つめていた
足、金色に輝く戦闘鎌、そして顔・・・
間違いなくウェイン・クルーズだった
一ヶ月もの旅の結果ようやく巡り会えたのだった
「ウェ・・・ウェインちゃんっっ!!」
ウェインの気が取られる
「ル、ルーシカ!?」
その隙に頭領にルーシカは捕まってしまった
「あぅっ!!」
「くっ・・・」
ルーシカのクビに短剣が突きつけられた
「ふっ、形勢逆転だなぁ!」
「卑怯なっ!」
「この猫女を殺されたくなければ武器を捨ててそこでじっとしてなっ!」
ウェインは言うとおりに戦闘鎌を消すとそこに立ちすくんだ
頭領は隠し持っていた短剣をウェインに投げつけ殺さぬ様かすめる程度に傷をつけていった
「くっ・・・」
「ウェ・・・ウェインちゃん・・・」
ルーシカは後悔した
自分が声をあげなければ、自分が居なければウェインはこんな事にはならなかっただろうに
自分が不用意に声をあげたためにウェインは傷ついている
(ウェインちゃん・・・。ママ、ごめんでし・・・やっぱり約束守れないかもでし・・・)
「ウェインちゃん!わちしの事は気にしないで、こいつをやっつけるでし!!」
「なっ!?」
「何を言い出すんだ!?ルーシカ」
「黙れっ!!」
「わちしのせいで・・・わちしのせいで!ウェインちゃんが傷つくのはもう嫌なんでしよっ!!」
「ル、ルーシカ」
「ウェインちゃんの為なら・・・わちしは・・・幸せでしっ♪」
ルーシカはニッコリウェインに微笑みかけた
「ばかっ!あの時も言ったろう!簡単に諦めるなって」
「黙れ黙れ黙れっ!」
「ぐっ・・・」
頭領は腕の間接を利用してルーシカの首を絞めた
「貴様っ・・・!彼女を・・・はなせっ!命の保証は・・・出来ないぞっ!」
そう言うとウェインは頭領をにらみつけた
「人質を放せるかっ、ばかめっ!!」
そう言うと頭領は更にきつくルーシカの首を絞めた
(あ・・・意識が・・・)
「ウェ・・・イ・・・ちゃ・・・バイ・・・バイ」
「ルーシカあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ルーシカの意識が完全に失われ力なく崩れ落ちた
その瞬間の出来事だった
ウェインは残像を残すほどのスピードで頭領に走りより戦闘鎌でルーシカの首を絞めていた腕を落とすと
同時に心臓を貫いていた
ウェインは倒れたルーシカを抱き上げた
「ルーシカッ!起きろ!目を覚ませよっ!ルーシカぁっ!!」
強く揺さぶるとルーシカは小さいうめき声と共に静かに瞳を開いた
「ルーシカっ!?」
「ぁっ・・・ウェイ・・ちゃ・・・」
ウェインの瞳には涙が浮かんでいた
「何が・・・・かなし・・・でし?わちしが・・・なぐさ・・めて・・・あげるでしよ?」
そう言うとルーシカはニッコリ微笑んだ
ウェインもその笑顔をみて微笑み返した
「ばかっ!嬉しい時にも出るって・・・お前も知ってるだろ?いつも、心配かけやがって」
ウェインは強く抱き締めた
「ウェインちゃん・・・やっと逢えたでし♪・・・クスッ・・・あったかい♪」
「俺も逢いたかったよ」
「嬉しぃ♪」
「俺もだよ、さ、疲れたろう?とりあえず宿屋に行こう」
「ウェインちゃん・・・少し甘えていいでしか?」
「何だ?」
「宿屋まで連れて行って欲しいでし」
「クスッ、馬鹿だなぁ、最初からそのつもりだよっ」
「クスッ、ありがとうでしっ♪」
そう言うとルーシカは安心したのかいくらも経たないうちに寝息をたてていた。
「フッ、おやすみ。ルーシカ」
*****続*****
グローランサーUのあちきお気に入りキャラ雷電3号の話を書いて見ました。ある意味ネタバレする可能性が無きにしもあらずなので、まだやってなかったりこれからの人は控えておいた良いかもしれません。まぁ、あちきが妄想をだらだら書いただけですがw
□■SS寄りへ■□